【ABR 2024-No.2】加速器の限界?プロトンが重くなる話
医学物理士の勉強を「読み物」として楽しむシリーズ。 第2問目の今日は、陽子線治療でもおなじみの「サイクロトロン」にまつわる物理のお話です。
今日の英文クイズ(The Question)
まずは原文に触れて、試験の雰囲気を感じてみましょう。
Question:
Which of the following factors limits the maximum energy that can be imparted to a proton in a cyclotron?
A. charge
B. the gap between the two dees
C. variation in mass with velocity
D. potential difference between the dees
E. the size of the two dees
日本語訳とキーワード
「サイクロトロンにおいて、プロトン(陽子)に与えられる最大エネルギーを制限する要因は次のうちどれ?」
- imparted to: ~に与えられる
- variation: 変化、変動
- velocity: 速度(speedよりも方向性を含めた「速度」として物理ではよく使われます)
答えと解説(Answer & Explanation)
正解は C. variation in mass with velocity(速度による質量の変化) です。
サイクロトロンで粒子を加速させるには、電極(ディー)のプラスマイナスを切り替えるタイミングと、粒子が半周して戻ってくるタイミングがピッタリ合う必要があります。
しかし、プロトンが加速して「光の速さ」に近づくと、アインシュタインの相対性理論によってプロトンの質量(m)が増加してしまいます。
m = m₀ / √(1 – v²/c²) (m₀: 静止質量、v: 速度、c: 光速)
質量が増えて「重く」なったプロトンは、一周するのにかかる時間が長くなり、加速のタイミング(高周波の周波数)から取り残されてしまいます。これが、サイクロトロンのエネルギーに限界がある物理学的な理由です。
これを解決するために、質量の変化に合わせて周波数を調整するのが「シンクロサイクロトロン」などの仕組みですね。
ひとこと
「加速しすぎると重くなって、タイミングが合わなくなる」というのは、なんだか全力疾走して息切れしているようにも見えて、少し人間味を感じる物理現象ですね。
実務で装置に触れていると「最大エネルギー」というスペックを当たり前に受け入れてしまいますが、その裏に相対性理論が隠れていると思うと、いつもの装置が少し違って見えてきませんか?
