はじめに

こんにちは。

私たちは普段、放射線治療の計画を立てたり、検証したりしていますが、それ以前に絶対になくてはならない業務があります。 それが「治療装置のQA(Quality Assurance:品質保証)」です。

毎朝の始業前点検から、月点検、年次点検…。 地味で根気のいる作業ですが、これこそが放射線治療の「命綱」です。

今回は、私たちが向き合っている「治療装置QA」の序章として、その目的と心構えについて書いてみたいと思います。

なぜQA(品質保証)が必要なのか?

放射線治療装置(リニアック)は、非常に精密な機械です。 車に車検やメンテナンスが必要なように、リニアックも日々メンテナンスが必要です。しかし、その精度の要求レベルは桁違いです。

  • 1mmのズレも許されない位置精度
  • 1%の誤差も許されない線量精度

もし、装置から出る放射線の量が予定より多かったら? もし、照射する位置が数ミリずれていたら?

治療効果が下がるだけでなく、患者さんの正常な組織を傷つけてしまう可能性があります。 「計画通りの放射線が、計画通りの場所に、正確に照射されること」。 この「当たり前」を毎日保証し続けるシステムこそが、QAなのです。

具体的に何を見ているのか?

QAの内容は多岐にわたりますが、大きく分けると以下の3つになります。

  1. 線量(Dosimetry)のチェック
    • 決まった量の放射線が正確に出ているか?
    • ビームの平坦度や対称性は崩れていないか?
  2. 機械的(Mechanical)精度のチェック
    • ガントリー(装置の回転部分)や寝台の動きは正確か?
    • レーザーの位置は合っているか?
  3. 安全性(Safety)のチェック
    • ドアのインターロックは作動するか?
    • 緊急停止ボタンは機能するか?

これらを、Daily(毎日)、Monthly(毎月)、Annual(毎年)という異なる頻度と深さでチェックしていきます。

管理して感じること

正直なところ、「QA=ルーチンワーク」と感じてしまう瞬間もあります。 毎朝同じ手順で、同じ数値を記録する。単調な作業に見えるからです。

しかし、業務に慣れてくるにつれ、その意識は変わりました。 「今日のこの数値が、今日治療を受ける数十人の患者さんの安全に直結している」 そう思うと、測定器の数値を読み取る一瞬に重みを感じます。

QAは、装置と対話する時間でもあります。 「今日は少しビームの調子が不安定かな?」 「機械音がいつもと違う気がする」 そんな「違和感」に気づけるかどうかが、プロフェッショナルとしての腕の見せ所なのだと学んでいます。

おわりに

今回はQAの「序章」として、全体像と心構えについて書きました。

「装置は壊れるもの、ズレるもの」という前提に立ち、それを未然に防ぐ。 私たちは、患者さんが安心して治療を受けられるよう、今日も舞台裏で装置と向き合っています。

次回からは、より具体的な「Daily QA(毎日の点検)」の中身や、実際の測定機器について掘り下げていこうと思います。

ABOUT ME
コテツム
「物理の教科書、日本語なのに意味不明」と絶望した経験から、世界一わかりやすい放射線治療の解説を目指してブログを書いています。 天才肌ではないので、凡人がどうやって知識を定着させるか、その「泥臭い攻略法」をシェアします。
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