1. はじめに:なぜ「中身」を知ることが重要なのか?

「みんなが買っているから」「ランキング1位だから」という理由だけで、大切なお金を投じていませんか?

投資において最も怖いのは、価格が下がった時に「このまま紙屑になるのでは?」という不安に負けて、売却(狼狽売り)してしまうことです。暴落時にあなたを守るのは、誰かの推奨ではなく、あなた自身の「納得感」です。本資料の目的は、オルカンの正体を紐解き、暴落時にも決して揺るがない「グリップ力(持ち続ける力)」という知識の鎧を身につけることにあります。

「唐揚げ弁当」のメタファーで理解する

投資信託(ファンド)を「お弁当」に例えてみましょう。「eMAXIS Slim 全世界株式(オルカン)」も「楽天・オールカントリー」も、中身はほぼ同じ「全世界株という具材が入った唐揚げ弁当」です。

ブランドによってパッケージや販売している「お店」は違いますが、選ぶ際のポイントは、中身(具材)が同じなら、できるだけ「安く提供しているお店(手数料が低いファンド)」を選ぶこと。想像してみてください。この一本を選ぶだけで、あなたは地球上のトップ企業2,900社を、自分のお金のために働く「部下」として雇うことになるのです。

では、この世界最大級の「お弁当」がどのような設計図で作られているのか、その核心に迫りましょう。


2. オルカンの「設計図」:MSCI ACWI(アクウィ)とは?

オルカンが連動を目指している「設計図」の名は、MSCI ACWIといいます。投資の世界では親しみを込めて「アクウィ」と呼ばれています。

  • MSCI: モルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル社。指数(物差し)を作る世界的なプロ集団です。
  • ACWI: All Country World Index(オール・カントリー・ワールド・インデックス)の略。

この指数は、投資の世界における「コンビニ」のような存在です。日本中どこにでもあるコンビニのように、世界中のプロ投資家が「基準」として採用している超メジャーな物差しです。オルカンはこの指数と同じ動きを目指す「インデックスファンド」という形式をとっています。

項目インデックスファンド
(オルカンなど)
アクティブファンド
目標指数(市場平均)と同じ成績を目指す指数を上回る成績を目指す
コスト(手数料)徹底的に低い運用の手間がかかるため高め
再現性誰がやっても同じ結果になり、万人向け運用の腕次第。当たり外れが大きい
長期の勝率長期的にはアクティブの7〜9割に勝つ長期で指数に勝ち続けるのは至難の業

「アクウィ」という名前がわかったところで、次はそのお弁当の中に具体的にどんな「具材」が詰まっているのかを見ていきましょう。


3. お弁当の具材:投資対象となる国と企業

「全世界」とは言っても、具体的にどの程度の範囲をカバーしているのでしょうか。アクウィの驚くべき網羅性を数字で確認しましょう。

  • 対象国数: 47カ国(先進国23カ国 + 新興国24カ国)
  • 銘柄数: 約2,900銘柄
  • カバー率: 全世界の株式市場の時価総額の約85%

地球上の主要な企業の85%をこれ一本で保有できることになります。現在の投資比率を地域別に整理すると、以下のようになります。

  • 先進国(日本除く): 約84.4%(うち、アメリカが約60%と圧倒的)
  • 新興国: 約9.8%(成長著しいインドや中国など)
  • 日本: 約4.8%

中身はApple、Microsoft、Amazon、NVIDIAといった、現代の文明を支える「地球代表」の精鋭たちです。さて、ここで「アメリカが6割というのは偏りすぎでは?」と疑問に思うかもしれません。実は、これこそがオルカンが最強と言われる「魔法の仕組み」による結果なのです。


4. 自動で中身が入れ替わる仕組み:時価総額加重平均

なぜアメリカの比率が高いのか。それは、オルカンが「時価総額加重平均」というルールで運用されているからです。

時価総額とは「株価 × 株式数」で、いわば「企業の人気や実力、規模」を合算したものです。さらにアクウィは、正確には「不動株調整後(ふどうかぶちょうせいご)」という仕組みも採用しています。これは「政府や親会社がずっと持っていて市場に出回らない株」を除き、実際に私たちが「取引できる株」の規模だけで評価する仕組みです。

  • 「勝ち馬に乗る」自動調整: 1900年代、世界の覇者はイギリス(24%)でアメリカは15%でした。しかし、時代と共に勢力図は変わり、現在はアメリカがトップです。オルカンを持っていれば、勢いのある国や企業の比率を自動で上げ、衰退したところを自動で下げる「オートパイロット機能」が働きます。
  • メンテナンスフリー: あなたが寝ている間も、指数が勝手に「勝者」を組み込み、ポートフォリオを最適化し続けてくれます。

完璧に見えるこの仕組みですが、実は「あえて入れていないもの」があります。ここを知ることで、あなたの知識の鎧はさらに強固になります。


5. あえて「入れない」もの:3つの境界線

オルカンは「何でも入っている闇鍋」ではありません。投資に適した精鋭部隊を守るため、あえて3つの境界線を引いています。

  1. 小型株(下位15%): 市場の大部分を占める大型・中型株に絞ることで、投資効率を高めています。小型株を含まなくても、長期的な成績に大差はありません。
  2. フロンティア市場(ベトナム、ナイジェリアなど): 市場が未成熟で、「買いたい時にすぐ買えない(流動性が低い)」リスクを避けています。
  3. スタンドアローン市場(ロシア、ウクライナなど): 法規制や紛争などにより「投資不適格」となった孤立市場です。これらは「爆弾」を抱えるようなもの。リスク管理のために除外されています。

「そうか!」の視点

オルカンは、世界中の企業の中から「投資に適した優良な精鋭」だけを厳選してパッケージしています。この「選別」があるからこそ、私たちは安心して資産を託せるのです。


6. 過去の実績とリスク:暴落の歴史を予習する

投資家として最も大切なのは、利益の皮算用ではなく「最悪の事態」を想定しておくことです。

  • 平均リターン: 1987年以来の年率リターンは約8.1%。直近10年で見れば年率8.48%と、非常に安定した成長を遂げています。
  • 最大損失: リーマンショック時には、高値から約マイナス58%を記録しました。

統計学に基づいた、1年間の値動きのイメージを胸に刻んでおきましょう。

95%の確率(標準偏差)で収まる1年間の成績範囲

  • 最高に良いケース: +40%(資産が1.4倍に!)
  • 最悪のケース: -30%(資産が7割に減る)

30%の暴落は、異常事態ではなく「統計的にいつ起きてもおかしくない範囲内」です。これを知っていれば、いざという時も「予定通り」と冷静でいられるはずです。


7. まとめ:自分の言葉で語れる「最強のアクション」

オルカンの正体は、「世界中の投資適格な精鋭2,900社を、時代の変化に合わせて自動で入れ替え続ける、メンテナンス不要の最強のお弁当」です。

中身を知ったあなたなら、もうパニックになる必要はありません。暴落は、お弁当の具材が一時的に安売りされているだけであり、仕組みそのものが壊れたわけではないからです。インデックス投資における最強のアクションは、ただ一つ。「何もしないこと」です。

理解度チェックリスト:自分の言葉で説明できますか?

  • なぜアメリカの比率が高いの?(答え:時価総額が大きく、世界で最も勢いがあるから)
  • 「不動株調整」って何?(答え:市場で取引できない株を除いて、実力を正確に測る仕組み)
  • 暴落したらどうすればいい?(答え:自動調整機能を信じて、何もしない)
  • なぜロシアなどの国は入っていないの?(答え:紛争や規制のリスクがある「投資不適格」な市場だから)

「中身がよくわからない不安」は、もう「知識という鎧」に変わりました。

この強固な鎧を身にまとい、自信を持って資産形成の航海を続けていきましょう。

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コテツム
「物理の教科書、日本語なのに意味不明」と絶望した経験から、世界一わかりやすい放射線治療の解説を目指してブログを書いています。 天才肌ではないので、凡人がどうやって知識を定着させるか、その「泥臭い攻略法」をシェアします。
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